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第二話「チョコレートパニック(後編)」 (1)

というわけで、ようやく後編になります。
本当に、本当に、長らくお待たせしました。

一応、前後編となっているので、こちらは前編を読んでたらちょっと楽しめるかも?
な仕様になっています。そのはずです。むしろ読まないと説明不sぐふぁ・・・!!
夏休みでお時間のある方は、よろしければと思います。

後編はクロ視点。やはりモノローグが書きやすい。そのせいで遊びすぎる感もありますが。
この人いろんな意味で振れ幅大きくて困るわっ。





チョコレートパニック(後編)



―私が普通でいられないのは、あなたに酔わされているせいよ?―

「?私は、先生にお酒なんて飲ませてないよ?」

先生の言葉の意味がよく分からなくて、怪訝な表情でそう返した。
もちろんそんなことしてないし、先生が酔っているようにも見えない。
普通じゃないって?どこが?いつもと変わらない平静でそう言われても、説得力がない。
それにこの人は、きっと、お酒を飲んでも酔っぱらったりしないと思う。
だから、尚更ワケが分からない。

「そのうち分かるわ」
「ん・・・」

私の心の内を読んだように笑ってそう言って、またキスをする。
続いて目尻、こめかみ、耳、耳の後ろ、うなじに近いところ、そして首筋へ下る。
"はじまりの合図"だ。
先生が"そういうこと"をしようとする時は、大概、最初にこうして優しくキスの雨を降らせてくれる。
それから確認するように私の目を見るのだ。
一見先生は強引だけど、いやまぁそれはそうなんだけど、ちゃんと私の意思を酌んでくれる。
口先では「やだ」と言いながら、まだ一度も先生を拒絶したことはないけれど、それでも先生はそこだけは変えない。
その優しさに気付いたとき、なんだか無性に嬉しかった。

「っ・・・は」

触れるだけのキスで既に体温が異常なほど上がってきた私を、先生はいつものように見つめた。
それに腕を廻すことで応えて、改めて情事が始まろうかというその時。

ぐきゅぅるるきゅるるるるるる

「・・・・・・・・・・・・・・・」

またも私は、やってしまった。
あぁ、そうだ、結局あれからチョコしか食べていなかった。

「・・・・・・ハァ」
「!!」

つい先程まで妖艶さ漂う表情をしていた先生が、とってもとっても呆れたような、疲れたような溜め息を吐いた。
そんな吐息に重さなどあるはずがないのに、私はダンベルか何かで殴られた気分になった。
一度ならず二度までも。加えて、断片的にしか覚えていない出来事。さすがに先生だって怒る。愛想を尽かされてこのまま追い出されてしまう。
いやだ、叱られるのは別にいい、でも嫌われるのは絶対にやだ。
謝らなくちゃ、と口を開いたと同時に顔の横に突かれていた腕が遠のいていった。
電気の明かりを遮っていた先生の身体もソファから降りようとしている。
離れていく。

「ごめんなさいっ!!」
「えっ?」

体を起して、必死で先生の腕にしがみついた。

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいごめ・・・ッ!ごめにゃさい、ごめんらはいっ」
「黒木さん?」
「ちが、うのっ、別に、そんなんじゃなくて!そんな、お腹とか空いてないし!今のは、その、違うから!だからっ」
「黒木さん」
「へ・・・」

抱きついた腕に押し付けていた頭を撫でられる感触で、溢れだした言葉が止んだ。
そっと顔を上げると、保健室で出迎えるときと同じ、呆れた微笑があった。
「・・・あ」と声になったかも定かでない声を出して、力が抜けた。

「私、怒ってるように見えた?」
「怒るかと、思った・・・」
「こんなことで怒りそうなほど心が狭いと思われてたのね」
「思ってない!思ってないよ!」

袖を掴んでそう訴えると、髪を撫でていた手で頬を包まれた。すごく、あったかい。

「なら、そんなに謝らなくてもいいでしょう?」
「でも、私また・・・」
「えぇ、だから心底呆れてるわ」
「うぐ・・・」

先生の正直な言葉に呻き声をあげるけれど、「だけど」と言葉は続いた。

「そんなこと、今までと変わらないでしょう?」
「――――・・・」

そう、確かに。私はもう何度となく先生に同じ思いをさせてきた。
その度に先生は頭を抱えたり、溜め息を吐いたり、お説教したりしたけど。
最後はいつも、笑顔で許してくれる。今と同じように。

「・・・うん、そうだよね、うん」

自分の言葉に何度も頷いて確認すると、充満していた不安がすーっと消えて行った。

「まったく、泣きそうな顔で謝るから何かと思ったわ」
「なっ・・・!泣きそうになんかなってないもん!」
「はいはい、そういうことにしておいてあげるわ。それじゃあ口開けて?はい、あーん」

顎を持たれて、体が勝手に反応して「あーん」と口を開ける。その指示の出し方はある意味反則だ。
理由を訊きそびれた私は、その状態のまま問いかけた。

「ぁんれ?」
「え?あぁ、さっき、舌噛んだでしょう?嫌な音がしたし、その消毒よ」

そういえば、夢中で謝っていたときに。構ってられなくて謝り続けちゃったけど、血の味がしてたな。
あ、思い出したら地味に痛くなってきた。
ていうか、消毒ってどうするんだろう?口の中って大丈夫なの?イソジン?
なんてことを思っている内に先生も患部を見つけたらしく、やっぱりとかなんとか呟いていた。
そして、どうするのかとやはり訊けないまま、持たれた顎を更に上に向けさせられ、消毒液をたっぷり含んだ質量のある脱脂綿が入り込んできた。

「うあ・・・っ、んぐ、ん゛ン・・・!」

その脱脂綿は的確に患部を狙い、消毒液を塗りたくっていく。
触れる度にチリチリした痛みが走ったけれど、すぐに別の熱が掻き消してくれた。
時間にして1分もしなかっただろう治療が終わり、脱脂綿代りの舌が唾液で厭らしく照らされながら出て行った。

「また噛まないように気を付けなさい」

そう言い放ってキッチンへ行く先生を見送って、私はソファへ倒れこんだ。
まだ息が荒く、口もだらしなく開いたまま。

「は・・・」

こんなんじゃ、気を付けようがない。



「ふ、普通に、うまい」

ようやくありつけた炒飯や追加されたおかずを口にして、そう言った。
そりゃぁ、作業工程を見てたから手際の良さも分かるし、チョコだっておいしかったから料理が下手なんてことはないだろうとは思ってたけどさ。

「失礼なこと言い出すなら食べさせないわよ」
「だって、先生なんでもできそうだからさ。料理下手だったらおもしろかったのに」
「私まで料理ができなかったら、二人の食事は毎回外食ね」
「それは遠まわしに私が料理下手だと言っておられますか?」
「遠まわしでもないと思うけど?」

間違っちゃいないけどさ。調理実習じゃ皮むきと洗い物しか任されないけどさ。それこそ失礼じゃないですか、先生。
でも、そうか。私は今、先生の手作り料理を食べているのか。

「あのさ、先生は、前にもこうやって誰かにご飯作ってあげたことあるの?」
「そうね・・・、両親が家に来たときに作ったぐらいかしら?」
「ほんとっ!」

今まで付き合った人にも作ってあげたのかと思ってたから、嬉しくなった。
私だけなんだ、こんな風にご飯を食べられたのは。頬の筋肉が緩くなる。特別な気分だ。

「じゃぁ、チョコはっ?作ってあげたことある?」
「それは何度かね。この時期に付き合っていた人には、一応」
「―――」

つくづく、私はばかだ。

「そっ・・・か、そうだよね、先生だしね」

料理ならまだしも、チョコなんてこういう時期になればあげる理由があるじゃないか。
まして、先生ならあげる相手なんて当然居ただろうし。
ほんと、なんで自分がそこまで特別な存在だと思ってしまったんだろう。浮かれすぎだ、あほちん。

「そうは言っても、みんな溶かして固めなおした簡単な物だったわよ」
「え?」

知らずに下がっていた視線を上げて先生を見ると、頬杖を突いて苦笑気味に私を見ていた。

「今回は一番手がかかったわ」
「それ、は、偶然とか気まぐれ?それとも・・・」

ワタシだから?

「さあ?」

そんな不意打ち、ずるい。

「・・・ばぁか」
「いいから、早く食べなさい」

お母さんみたいなことを言いながら、何か付いていたのだろう、私の口元に手を伸ばしてそれを取ると、自分の口に運んだ。
ここは、その行動に反応すべきところだろうし先生もそうなると思っていただろうけど、それよりも気になる光景が目に入った。

「先生、首、赤いよ?」

腕を伸ばしたときに見えた先生の鎖骨の辺りに、いくつか赤みが差していた。昼間はたぶん無かったものだ。
こんな時期に虫刺され?と少し前の私だったらそれぐらいしか思いつかなかったけれど、今の私には多少の心当たりがある。
と、そのことに気付いたのは、言葉を発した後だった。

「これ、あなたが付けたのよ?」

今度は先生自ら襟周りを軽く引っ張って、私にその箇所を見せた。

「あー、やっぱり、そうですよねー」

二つ三つどころじゃない痕を付けたのが自分だと思うと恥ずかしさが込み上げて、視線を逸らさずにいられなかった。
自分で振っておいてなんだけど、なんかすごい、やらしい。

「月曜日までに消えなくて誰かに見つかったら、責任、取ってもらうわよ?」
「せ、セキニンとは、どう取ったらよろしいデショウか・・・」

やらしいとか言う前に、なんていうか、地雷踏んだ感じですか?

「それは、じっくり教えてあげるわ。主に身体の方にね」

むしろ発火装置を起動させた感じですね、はい。

「あ、あのさ、先生。さっきのこと、ほんとに怒ってない?」
「怒ってないわよ、あれは仕方のないことだもの」
「だったら、いいんだけど。そん時のこと、あんましよく覚えてないから、何かしちゃってないか気になって・・・」

その時の私は、まだ知らなかった。

「・・・覚えてないって、全部?」
「んー、ほぼ、全部?その首のもどうしたんだか・・・。いや、先生がいつもと違ってかわいいなぁって思ったことは覚えてるんだけど」
「へぇ・・・、そうなの」

自分が、核爆弾のスイッチに触れてしまったことを。


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2009年08月16日 | 保健室シリーズ | コメント 0件 | トラックバック 0件 | トップ

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