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04 手を伸ばす



また放置してしまいそうなので、その前に有り物を投下。


ね、ねもい・・・・・・






04 手を伸ばす



「――――・・・」

カシャン、と無機質な音をたてて屋上のフェンスを掴んだ。
眼下には、部活のない生徒達が騒がしく帰宅している光景が広がっていた。
その中に、ひとり。
一見周りと同じように、楽しそうに友人と話しながら校門へ向かう彼女を見つける。

(・・・うそつき)

それは彼女なのか、あるいは自分なのか。
言った自分でも分からなくて、またカシャン、と音をたてて背をフェンスに預けた。



今日はとても晴れていた。
眩しいほどに白い雲が空の青を際立たせていて、一枚の画のようだった。
元々、開放された屋上目的でこの学校に入った私だから、今日行かずにいつ行くのかと気持ちを弾ませて屋上へランチをしに向かっていた。
すると、もうその先には私の目的地しかないという階段で、嫌でもよく見かける男子とすれ違った。
相席にならなくてよかったと思いながらも、それほど気にせずに少し錆び付いたドアを開ける。
吹き抜ける風に押し返されそうになりながらドアをくぐり、日差しが意外に強かったので裏側の日陰に行くために角を曲がろうとすると。

『―――』

彼と相席をしていたであろう人物が居た。
果てしなく高い空の下で、小さく小さく膝を抱えた彼女が。

『・・・!』

さっきすれ違った顔が浮かぶ。
私の、一番嫌いな人。彼女の、一番好きな人。
そして、目の前の光景。
何があったのか理解できてしまい、本能的にその場から逃げようとしたが、それより一瞬早く、屋上のドアが鈍い音を響かせて閉まってしまった。
ビクッと彼女が顔を上げ、伸びた私の影を追って私本体と目を合わせた。

『あれ・・・』

意外、というか予想外だった。
てっきり泣いていると思った彼女の顔は、ただ驚きの表情しかしていなかった。

『・・・こそこそ何してるの』

それどころか、訝しむように私を見上げてきたのだ。

『こ、こそこそなんかしてない』
『そう?覗き見が見つかったような顔してたけど?』
『一瞬、だけだよ』

そう、覗き見たのは一瞬だけ。その一瞬の彼女は、本当に泣いていたんだ。

『やっぱり見てたんじゃん』
『見えたんだってば』
『はいはい』

会話をしつつ彼女は立ち上がり、スカートの皺を直す。
その姿を、私はかける言葉も見つからず、ただ眺めていることしかできなかった。

『それじゃ、あたしは先に教室戻ってるね』
『え・・・、あ、うん』

私の横を通り過ぎた彼女の背中を目で追いかける。
どうして、そんなことをしようと思ったのか。
彼女を引き止めたくて、無意識のうちに手を伸ばしていた。
だが、私の手が彼女に触れる前に、気取られたのか、彼女が振り返ってしまった。

『何しようとしてんの』
『あー・・・、ごみが、背中に』
『え?取って、取って』
『もう、取れたよ・・・』

触れれば本当に引き止めてしまいそうで、私は嘘を吐いて誤魔化した。
それを信じた彼女は「ありがとう」と言って屋上を去っていった。
彼女が居なくなったことで殊更静かになった屋上に、一人ぽつんと立ち尽くす。

(あぁ・・・、くそっ)

彼女が泣いていたなら、まだかける言葉もあっただろう。でも、そうじゃなかった。
背中を丸めた彼女は泣いていたけれど、目に見える涙はなかった。
そんな風に泣く人間にかける言葉なんか、持ち合わせてない。

『・・・バカが』



その後からずっと、私は彼女から目が離せなかった。
いつ泣き出すかと心配しながら、同時に期待しながら、ずっと。
しかし、彼女は何事もなかったように午後を教室で過ごし、放課後を友達と楽しんでいる。
彼女はまだ、泣いていない。

「好きだったんじゃないの?」

日中は感じなかった少し肌寒い風に吹かれながら、背中越しに遠い彼女へ問いかけた。
別れたところで泣きもしないような恋だったなんて、そんなの許さない。
じゃなきゃ、彼女を諦めた私の心が浮かばれない。
私の恋が、その程度の想いに負けたことになる。
そんなのは、絶対に許さない。

(ちがう、私のせいだ)

私が現れなければ、彼女はその背中と同じように素直に泣いていたんだ。
とても意地っ張りだから、人前で泣くことを躊躇ってしまったんだ。
誰も居ないのに泣き顔を隠そうとするほど、強がりで。
それ以上に私が強がりだったら、その見栄も壊して泣かせられたのに。

「ごめんね」

(こんな、薄情なヤツで)

雨の中なら、彼女も泣けるだろうか。
そんなクダラナイことを考えて、クダラナイと分かっていながら、あの時彼女に届かなかった手を空へ伸ばす。

(どうか、彼女が泣けますように)

機嫌のいい空に、泣いてくれと祈った。
こんな声、届くわけがない。そんなことで、彼女が泣くわけがない。
あぁ、バカみたいだ。そう、自嘲した瞬間。

―――ポツリ

私の頬に、涙が落ちた。
機嫌を損ねることなく、空は泣き出した。
本当に静かに、静かに、そっと。
それはあまりに優しすぎて、こんなんじゃ、彼女はきっと泣いてくれない。
だけど、晴れた空から降る雨は太陽に反射して、きらきらという表現が一番似合うほど綺麗で。
これでもいいか、と私は笑い、既に見えなくなったであろう彼女を振り返った。

「      」

目が合った。
そんなの、錯覚に決まってる。第一、ここから彼女の顔なんて見えやしない。かろうじて、雰囲気で識別できる程度だ。
なのに、彼女がこちらを見上げていて、ちゃんと私の顔を見ていると分かった。
そして、泣いていることも。

「・・・・・・」

きれいだった。
降りだしたこの雨みたいに、それはきれいだった。
どんな感情より強く、私はそれに触れたいと思った。

「・・・・・・、・・・ッ」

一瞬でもその瞳から目を離したら止んでしまいそうで怖くて。
私は一歩だけ後ずさって躊躇い、"止むな"と願って床を蹴った。

「はぁっ、はぁ、っ・・・!」

滑り落ちるように階段を駆け下りる。
あの雨に触れるためにこんなに急いでいるなんて、不思議だ。
私は、アレから逃げたはずなのに。

彼女に泣いてもらわなくちゃ困るのは本当。
でも、あいつのせいで泣く姿は見たくなかった。
だってそれは、彼女があいつを好きだという何よりの証拠。
それを友達面して隣で受け止めるなんて、そんなことできるほどいいヤツじゃない。
だから引き止めることも出来ず、私の見えないところでその涙が枯れればいいと見て見ぬフリをした。

だけど今、ソレに近付くために全力疾走しているのはなんでだろう。
この先、永遠に考えても、その理由は分からないと思う。
そもそも、彼女を好きな理由さえ説明できないのだから、傍に居たいと思う理由なんてあるわけがない。
理屈じゃないと、空へ届いたこの声が叫んでいるんだ。

「っハァ・・・はあ、は・・・」

上履きのまま玄関を抜けると、彼女は屋上で見たときと同じ場所に立っていた。
既にその顔は俯いていて、雨のせいもあってよく見えなかったけれど、雨以外の滴が頬を伝っていた。
それは全部、あいつへの想いに他ならないけど。それを見ているのは、やっぱり辛いけど。
決して、私のために流されることはないけど。
それでも私は近付いていく。
苦しさより、もっと大きなものがこの身体を支配していた。

「ばか、最初っからそうやって泣けばいいのに」
「うるさい・・・っ」
「ん、・・・ごめんね」

絶対に顔をあげようとしない意地っ張りの傘を退けて、彼女を雨の中に晒した。
彼女を好きになったりしなければ、雨に濡らすこともなく泣かせてあげられたかもしれないのに。
そんなことを思っても、現実が変わることはないんだろうな。

(ほんとに、ごめん)



晴れた空から降る雨の中で泣く彼女と一緒に

彼女の雨に打たれて、気付かれないように私も泣いた




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2009年09月14日 | [10のお題]祈る | コメント 0件 | トラックバック 0件 | トップ

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