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第一話「CALL ME」 (4)

林家先生の「ストロベリーシェイクSweet」終わってしまわれた。
やはりおもしろかった。あの二人いいなぁ、好きだ。
自分もあんな純粋?な恋が書きたいとです。恋がしたいです。手遅れだ。

あ、拍手ぱちぱちありがとうございます!ときめいてます!(何






CALL ME


「――――――」

目を覚ましてもなかなか頭が働いてくれず、何分かボーっとしていた。
その後に、なんとか体を起こして背もたれに寄りかかって、またボーっとする。
何がなんだかさっぱりだ。まったく何も考えられない。とうとう頭やられたかな。
ここは、どこだっけ。これ、ベッドだよね。寝てたんだよね。どこで寝たんだっけ。
つぅか、学校だよね。制服着てるもんね。帰った覚えないもんね。ベッド違うしね。
あぁ、それで、どこだっけ。学校。寝てたから。学校で、ベッドがある場所。
って、一つしかなくね?

「・・・・・・、・・・!!?」

止まっていた思考にスイッチが入って、一瞬の内にして戻ってきた大きな情報に処理が間に合わず、体が暴走した。
ほら、その証拠に、ベッドから転げ落ちた。しかも、体の内部でパキッて鳴ったよ。大丈夫か。
ちがう、ちがう。そんなのは、どうでもいい。
問題なのは、今戻ってきた情報の内容だ。
私は、ここで何をしていた?何をされていた?
先生が。久保先生が。葉月さ―――

「黒木さん?」
「ッ!?」

ベッドの脇に落ちたままの形で、慌てて声のした方を見上げる。
そこには、いつもと変わらないように見える先生がいた。
この人が。この人と、私は。この人に。私は。

「ぁ・・・、ぅぁ・・・あ・・・ぅ」

何度口を開いても、同じようなうめき声しか出てこなかった。
何か言いたかったけど、何も言えない。言えるわけがない。

“先生は、私を抱いたの?”

「大丈夫?黒木さん」
「な・・・」

拍子抜けだ。予想はずれだ。なんだ、それ。
私はてっきり、またあの、からかうような笑みで「何が言いたいの?」とか全て悟りきった上で訊かれるのかと思ったのに。
目の前には、普通に心配そうな顔をした先生が私の目を覗き込んでいた。何も知らない瞳が。

「――――――え?」

ちょっと、待ってよ。
え、なに、本当に二重人格?別人って?
・・・待て待て。その前に、もっと高い可能性があるじゃないか。
私は、寝ていたんだ。
この情報が、夢である確率の方が高い。
お誂え向きに、さながら私は寝ぼけてベッドから落ちた人そのまま。制服だって元通りだった。
だったら、夢だと考える方が自然なような気がする。
なんだ、そうじゃん。やっぱ、夢なんじゃん。
よかった、よかった。あれが現実だったら、ホントに困るよ。うん。

「あは、ははは」

それなのに、なんでだろう。
泣きたい。

「黒木さん・・・?」
「あ、あぁ。ごめん、大丈夫だよ」

苦笑しながら立ち上がって、先生を見上げる。

「なんか、寝ぼけちゃったみたいでさ。恥ずかしいねぇ。骨鳴っちゃったよ」

虚しい。すべてが、幻想だった。全部、私の夢。既に消えてしまった世界。
それはもう、どこにもないのだ。どこを探しても、あの世界は返ってこない。
だって、あそこにいた人自体が、いないのだから。
自分で思った言葉に、胸が締め付けられた。痛くはない。ただ、苦しかった。
いない、もう、いない。私を心配してくれるこの人は、あの人じゃない。

"私を見てくれたあの人じゃない"

「さて、そろそろ教室戻ろっかな」

空っぽの笑みを浮かべて、“現実”の先生の横を通り過ぎる。

「・・・・・・」

その刹那、腕を引かれて、進行方向とは逆を向かされた。
そして、触れる唇。

「!・・・、?・・・っ、、、・・・・・・」

なんで。どういうこと。私は、まだ夢を見ているのだろうか。
もう一度、この感触を味わえるなんて。
再び体を暴走させようにも、腕を押さえつけられていて身動きが取れなかった。
しばらく、その状態が続いた。考えられるだけの時間があったにもかかわらず、私には何も分からなかった。
ふ、と強張っていた体の力を抜くと、唇はやっと離れた。

「は・・・ぁ・・・」

頬が火照っている私とは正反対に、先生はとても涼しげな表情をしていて。
その瞳には、妖しい色が戻っていた。

「・・・・・・え?」

本当に、どういうことだ。ワケがわかんない。私は夢から覚めたはずなのに。どうして、こうなる。
もしかして、本当の本当に先生は二重人格だったのか?今入れ替わったのか?
それは、都合がよすぎないか?先生が二重人格だったら、とっくに気付いてるはずだ。・・・いや、私の場合、どうだろう。
もっと、他に可能性はないのか?夢でもなく、二重人格でもなく。もっと、違う発想。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

思い出せ。夢の中の先生って、どんなだった?
強引で、ねちっこくて、妙にサディストで、癪に障る笑みを絶やさなくて、ずるい人。
そう、ずるくて、頭が切れる人。監督兼シナリオ兼役者。
私はこの人の、操り人形。

「・・・演技、ですか」
「もちろん」

この笑みだ。忘れたくても忘れられない。震わせるほどの。
さっきのは、全部演技だったのだ。私に夢だと思わせるための、遊び。
女優顔負けだ。疑う余地すらなかった。いいや、この人は女優じゃない。詐欺師になれるのだ。

「どういうつもり」

すべてが解明され、安心する間もなく、怒りが湧き上がる。
詰問するように言っても、先生は笑顔でひらりとかわす。

「特に理由なんてないわ。ただ、私が知らないフリをしたら、あなたはどうするのかしら?って思っただけ」

あぁ、そう。私をからかうことは理由にならないと。それほどに当然のことだと。そう言いたいか。

「もう少し引っ張ろうかと思ったんだけれどね」
「どうせなら、そのまま有耶無耶にしてくれた方が助かったよっ」

ぷい、とそっぽを向いた側から顎を持たれて、見上げさせられたかと思うと、先生はきっぱりと言い切った。

「嘘つき」

と。確信している様子で。
この自信は、一体どこから沸いてくるんだ。

「嘘じゃないもん」
「あなたが、私を騙せるとでも思ってるの?」
「!」

不意に、抱きしめられる。
白衣から香ってくる薬品の匂いが、ミントのように頭をすっきりとさせた。

「あんな切なそうな顔して・・・、そんなに“私”がいなくなることが嫌だった?」
「・・・」

エスパーにも、なれるんですか。
そうだよ。あの夢の中の先生がいなくなることが嫌だった。
触れてほしかったんだ。触れてくれるなら、夢でも現実でも、どっちでも構わない。
私の肌に触れたときの、あの指の感触が、温かさが、忘れられない。
溺れていった、あのキスを、してほしくて。
この感覚は、なんだろう。

「半ば無理やりだったくせに、夢でした、で済まされちゃ堪んないもん」
「素直じゃないわね」
「・・・素直に、させてみれば?」

顔だけを浮かせて、さっきよりも至近距離で先生を見上げる。
驚きなことに、先生の目が僅かばかり見開いていた。いつも余裕たっぷりだから、なんか可笑しかった。
先生の真似をするように、似合わずも、ふ、と大人の笑みを浮かべた。
かかとを浮かせて、更に顔を近づける。もう数センチというところで瞳を閉じた。
あとは、先生が。

「ダメよ」
「え・・・」

予想外な展開だった。
肩に手を置かれて、優しく押しとどめられる。正反対に、声は無感情が故に冷たかった。
それは、拒絶?今更?それも、先生が?私じゃなくて、先生が?
どうして。

「なんで・・・!」
「さっき落ちたとき、どこか怪我しなかった?」

それが理由ともとれたけど、話を変えているようにも思えた。
自分の言葉に乗せて、ごく自然に体を離して消毒液などが乗った机の方へ向かった先生。
その姿を目で追うこともできなくて、私は立ち尽くしていた。

「結構すごい音したから、痣になってるところがあるかもしれないわね」

私に背中を向けたまま、先生は話し続ける。
いい加減にして欲しい。急になんだ、その態度は。
ほんの数時間前までは、嫌がったって事を進めてきたくせに。
求めたから?私から欲しがったから?冷めちゃった?もう飽きた?
こんな"オモチャ"、いらなくなったの?

「・・・・・・だいじょぶ、です・・・」

呟く程度だったから聞こえなかったかと思ったけど、先生は私の方を向いて、そう?と言った。
私はと言えば、なんだかすごい打ちひしがれてて、先生を直視することができずに俯いていた。
これじゃあ、いなくなったのと一緒じゃないか。
触れてくれなくなったなら、もう別人じゃないか。
こんなのって、ひどいよね。
こんなの。こんなに。こんな。
そのとき鳴ったチャイムが、私を扉の方へと動かした。

「今、お昼休みが終わったところよ?次の休み時間まで居たら?」
「いいです・・・」

拒んだくせに、どうしてそんなこと言うんですか。
あなたと一緒に居たくないんだ。

「失礼、しました・・・」

扉を開けて、廊下に出ると。

「黒木さん」

呼び止められる。立ち止まる。
期待を含んで、振り返った。

「スカート、ちゃんと直しておきなさい」
「・・・・・・、・・・はい」

バカみたいだ。あ、“みたい”じゃなくて、実際バカなのか。
こんなお遊びに付き合わされてしまうほど。ほんのお遊びを、本気にしてしまうほど。

「じゃあね」

そして閉まる扉。
これきりなの?これきりだ。これきり、おしまい。
授業が始まっている時間の廊下は、とても静かだった。
階段の方へと歩を進めるたびに、上履きと廊下の摩擦できゅ、きゅ、と鳴る音が、いやに大きく聞こえる。
呆けているのとは違う、この空洞。
昔、部屋にあった大きなぬいぐるみを捨てた後のような空虚さ。
考えるということを、放棄して。

「・・・・・・」

階段に差し掛かって、一段上がろうとする。
しかし、足が持ち上がらなかった。腕も上がらなかった。力が、入らない。
当たり前だ。糸の切れた操り人形が、どうやって動けるというのだろう。
仕方がないので、壁に体を預けた。
そのおかげか、重かった体が幾分か楽になった。
だが、そのせいで、余計なところに力が働いてしまったようだ。

「――――・・・っ」

廊下があまりに静か過ぎるから、泣くには声を殺さなければならなかった。


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2009年01月20日 | 保健室シリーズ | コメント 0件 | トラックバック 0件 | トップ

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