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第一話「CALL ME」 (5)

略してCM。とりあえず最終回。です。
英語は分かりません。適当です。無理矢理入れました。

ここに載せるにあたって、久々にちゃんと読み返したところ。
わぉ!おかしなところがいっぱい!(いっぱい!じゃねぇ
今の自分には納得できない部分がたくさんあって、手直しのいい機会になりました。

それでも穴だらけだとは思いますが、よろしければこの一本、お付き合いくださいませ。






CALL ME


今度こそ、夢だと思うことにしよう。明日には、記憶から消しておこう。
それが、一番いいんだ。そうすれば、この痛みも消えるんだろう。
覚えていることは、辛いから。
おかしいね、どうしたんだろう、これは、なんだ。

「この文法はこれから何度か出てくるので・・・」

今まで遠く聞こえていた先生の声がすっと入ってきて、私は顔をあげた。
六限なんだっけ、と周りを見ると、みんな英語の書かれた教科書を出していた。
日本語すら難しいのに、外国の言葉なんて分かるわけない。
だって、私には、先生の言葉すら理解できなかった。

『そういうところが、可愛いって言うのよ』

そう言ってくれたのに。

『あなたみたいな子、嫌いじゃないわ』

そう、言ったくせに。

「ウソツキはどっちだ・・・」

可愛いとか、簡単に言うな。何の意味もないなら、言うな。
言われたその時は嬉しかったはずなのに、今ではもう苦しいんだ。
苦しいのに、思い出してしまうんだ。何度も、何度も、何度も。
そんな言葉達ばかりがぐるぐる頭の中を回って、渦を作って、その中心はとても冷えていて。触れれば痛みしか返ってこない。
だから、忘れたい。忘れたいんだ。だけど、消えないんだ。
教室に帰ってきてからもずっと先生のことが離れなくて、気を抜けばまた泣きそうになる。
おかしいね、どうしたんだろう、これは、なんだ。

「はい、次のページね。Please call me in the evening.Then・・・」

何気ない一文が、私の耳を掠める。

「ぷりーず、こーる、みー・・・」

私にだって分かるくらい簡単な訳だけれど、浮かぶのは間違った意味。

―――名前、呼んで?

落ち着いた声を反芻しながら、腕を枕にして机に伏せた。
先生、あの時だけ、本当の“お願い”をした。
何の含みも強制力もなく。きっと、私が名前を忘れていても呼ばなくても、先生はあのまま続けていたと思う。
やっぱり、分からないよ。名前を呼ぶことに、どんな意味があったの?先生にとって、それは大事なことだったの?
ねぇ、ちゃんと呼べたでしょ?私、ちゃんと覚えてたよ?
もう一度、名前を呼ばせてはくれないのかな。
夢に沈めば会える気がして、瞼を閉じた。
視界が失われて、他の感覚が鋭くなるけれど、英文を読み上げる先生の声はどんどん遠ざかる。

『今まで、何度呆れさせたと思ってるの?』
『キス、教えてあげようか?』
『私のことも楽しませて、ね?』

『むしろ、好きよ』

そんなの、私だって―――。

「・・・・・・?・・・・・・・・・ッ!!?!」

まどろみにも至らぬ内に、ばっ、と身体を起こした。
待って、待て待て待てマテ待て、落ち着け、冷静になれ、急速冷凍のように冷やせ。
私、今、何思った?何を思い出して、何を言った?
先生の言葉が浮かんでは消え、浮かんでは消え、繰り返すうちに例のフレーズに行き当たり。
はい、ここで、"私だって"?"私だって"ってなんだそれ。同意?対抗?その続きは何?
何それ、何ですか、どういう意味ですか。というより、先生はどんなつもりでそのような言葉を?
そして、どんなつもりだった場合、私の発言は問題にならないのか。

「――――――」

先生がどんなつもりだろうと、今の私のそれが持つ意味は動かず。
だから、つまり、なんだ、あれだ、どこだ。

「先生の、こと・・・」

私はこの時にようやく、夢ではないかと疑ったときのことを思い出した。

"それなら早く目を覚ませと思う反面、夢ならもう少し続いて欲しいと願う自分が居た"

どうか、覚めることのない夢を。




だがしかし、気付いたところで何かが変わるかというと、そうではない。
それは私の中に変化が起きただけであって、外界にはなんの影響も無い。
なら、どうすれば影響を及ぼせるのか?そんなことは、分かりきっている。
私の中に変化が起きて、外界へ影響させたいのなら、私が動けばいいだけの話だ。
と簡単に言ってはいるが、実に難しいんだな、これが。
だから私は、放課後、意を決して保健室の前に来たはいいが、扉を開けることもできずに突っ立っているのである。

「うぬぬ・・・」

だって、あんな別れ方をして、どういう顔をしてドアを開ければいい?
しかも、内容が内容なだけに、どう切り出していいかも分からない。
それに。

『ダメよ』

それに、また、拒絶されたら?先生の言葉の持つ意味と、私の気持ちが同じとは限らない。
そう思うと、怖くて仕方が無かった。逃げ出したい。
でも、今行かなかったら、もう言えない。きっと、この先後悔する。
じゃぁ、やるしかないじゃないか。

「・・・よし」

あと十秒。十数えたら、開けてしまおう。
目を閉じて、深く深呼吸をして、ゆっくりと数え始める。

「いち、に、さん、し、ご」

あと五秒で、告げる。

「ろく、なな、はち、きゅ」
「センセ、ありがとー」
「う?」

目を開けると、目の前にあったはずのドアが開かれ、部屋の中が晒されていた。
まだ十秒経ってないんですけど。九秒なんですけど。困るんですけど。
十秒待たずに保健室から出てきた生徒が私の脇をすり抜けて行った。
私が入ろうとしていると思ったのか、ドアも閉めずに。

「ぁ・・・」

丁度、入り口の正面に立っていた先生と目が合ってしまった。
数えている途中で、心の準備をしきれていなかった私の心臓の鼓動が、急速に速度を上げていく。
一方、頭の中は停止状態で、何も考えられず、言葉が見つからなかった。
先生も黙っていた。何も言わずに、こちらを見ていた。
沈黙している私と先生以外、廊下と保健室には誰も居なくて、本当に学校なのかさえ疑わしくなるぐらい静かだった。
周りには誰も居ないで、私と先生だけ。
私と先生の、二人きり。

「・・・・・・」

ねぇ、先生。
もしも、誰か一人でも居たなら、あるいは、先生が居なかったなら、私は何事も無かったように帰ってたよ。
そうして全部忘れて、明日先生に会っても、何事も無かったように接してたよ。
だけど、先生はちゃんと居て、まるで消してしまったように先生以外誰も居ない空間がある。
これは、私が望んだの?それとも―――。
このまま、足を踏み入れてもいいんだろうか。一歩でも足を踏み入れたら、本当に戻れなくなる。
この期に及んでまだ躊躇っている私へ、先生が誘うような瞳で微笑みかけた。

「どうしたの、黒木さん?」
「・・・・・・」

どうして?そう訊き返したかった。
先生は私を拒んだのに、それなのに、今は誘うの?
捨てたものが、あとで恋しくなった?・・・ちがう、そうじゃない。
そんな被害妄想じみた理由なんかより、“先生だからこそ”の理由があるじゃないか。
この人は、女優顔負けの“演技”が出来る人なんだぞ。あの、気の無い素振りが演技じゃないと、どう証明できるだろう。
そう、この笑みは、明らかに楽しんでいる。私には、笑みの違いが分かる。すげぇ。
私がここに来ることが、先生には分かっていたのだ。
ちくしょう。結局、いつまでも操り人形か。
でも、糸が切れていなかったことが、こんなにも嬉しい。

「・・・、・・・・・・」

さぁ、もう決心はついた。ゆっくりと歩き出して。
今日最初に保健室に入ったときのように、後ろ手に扉を閉める。
違うのは、文句を垂れなかったこと。そして、鍵を掛けたこと。
誰かが入ってくることが無いように。そう、斉藤君が入ってきたときのような状況を、私は期待しているんだ。
そんなことを考えてしまったせいで赤くなった顔を俯かせて、私はサインのように呟く。

「葉月、さん」

近付いてくる足音。更に鼓動が高鳴る。
頬に当てられた手で顔を上げさせられ、見つめられた。

「まだ、約束果たしてなかったわね」
「やく、そく・・・?」

約束なんてしたっけ?
ダメだ。嬉しくて、他のことなんてどうでもいい。

「あなたを気持ちよくさせた後で・・・」

キスしてあげるって、と重なる直前に言われ、唇が動きに合わせて私のそれを軽く掠めた。
あとはもう、深く、どこまでも。

「んッ・・・ん、ん・・・」

しばらく、二人きりの保健室の中に唾液の混ざり合う音だけが響いた。
口の中をかき回すだけかき回してから先生は離れ、私の髪を愛でるように梳きながら言った。

「『またね』って言った方がよかったかしら?」
「遅いよ・・・」

先生の胸に頭を預けて言うと、くす、と笑い声が聞こえて、腕を廻された。
私にしてみれば、笑い事じゃない。本当にそうしてくれたら、気も楽だったろう。
どれだけ悩んだと思ってるんだ。どんなに苦しんだか。ただでさえ、こんな思い初めてなのに。
大量にある文句を一つとして言えないのは、この人にだけ弱い自分が居るからだろうか。

「ごめんなさい、あなたの想いを知りたくて」
「そんなの、気付いてるくせに」
「分かりやすいものね」

そうですよ。どうせ感情むき出しの子供ですよ。

「だったら、なんでこんなこと・・・」
「一応、考える時間をあげたのよ。後になって、『流されただけ』とか言われたら嫌じゃない?」

なんだ、今回はちゃんと、“選ばせるため”って目的があったのか。また、私が困るのを見て楽しんでるのかと思った。
選択肢なんて、最初から無いのに。

「だからって、あれは冷たいよ。ホントに嫌がられたのかと思ったじゃん」

顔を上げて、軽く先生を睨んだ。あれのせいで、挫けそうにもなったんだ。

「最初は、やんわりと断ち切るフリをしようと思ったのよ?」
「それがどうしたら、あんな風になるんですかね」
「まさか、あなたが誘ってくるなんて思わなくて」
「べっ、別に、誘ってなんて・・・!」

キスがしたいと思っただけであって。確かに、私からしようとはしたが。
・・・それが、“誘う”ということなのか。

「それだって、冷たくする必要なんてなかったじゃんっ」

ネチネチ言われそうだったので、早々に本題に戻した。

「言ったでしょ?予想外だったって。冷静に対処できなかったのよ」

なんだ、先生はあれで結構驚いていたのか。私とは対照で、感情が表に出ない人なんだ。
動揺を隠そうとして、あんな冷たい態度を。
この冷静沈着の塊のような先生を動揺させるとは、私ってマジすごいかもしんない。

「すぐに、やりすぎたなって思ったんだけれど、言い訳のしようがないでしょ?」

まぁ、私にその真意を伝えなくちゃいけないからね。

「だから、軽くフォロー入れたんだけど、気付いていたかしら?」
「どの辺がフォローだったの?」

つまり、まったく気付いてないんですよ、私は。

「もうちょっとここに居たら?とか、わざとらしく呼び止めたりとか」
「軽すぎてどっかに飛んでっちゃったよ」
「それでも、あなたはここに来たわ。どうして?」
「・・・」

とうとう時が来たと、緊張が走った。
先生は、私の気持ちを分かってると思ってる。
だけど、先生が分かってるのは表面上のことだけなんだ。
その奥までは知らない。奥があるということさえ、先生は気付いてない。
鼻を、明かしてやる。

「それは・・・」

告げる。

「先生が、好きだったからだよ」

そう言って、きゅ、と先生を抱きしめた。
相変わらず、白衣からは薬品の匂いがする。

「どの辺が?巧いところ?」

からかうつもりだったのだろう。それに私が慌てることを期待したんだろう。
ごめんね、先生。今だけ、私は操り人形じゃないよ。

「先生は、たぶん勘違いしてるね」
「え?」

これも予想外だった先生は、また驚いていた。その、ちょっと間抜けな声に笑い出しそうになるのを我慢して、私は続ける。

「今日じゃないよ。前から、先生のこと、好きだった」

そう、前から。私も気付かなかったほど、密かな想い。
知ったのは今日だけど、恋に落ちたのは、もっと前。
悪いけど、私はいくら美人だからって“ただの先生”に体を許したりはしない。

「ね、先生は?」

冗談半分本気半分で訊いてみた。
私だけ想いを言葉にするなんて、そんなのずるい。

「・・・聞かなくちゃ、わからない?」

囁く声。

「聞きたいの」

呟く声。

「好きよ」

私だけに響く声。

「私は、どうでもいい相手に痕を残したりしないもの」
「アト?」

アトとは、一体なんのことだ?残す、って。

「首の、誰にも見られていないといいわね」
「・・・」

緩く先生を押し退けて、洗面台のところにある鏡の前に直行する。
自分の首の辺りを凝視して、「アト」なるものを探す。
そして。

「なん・・・」

それは、あった。
蚊にでも刺されたように赤くなっている場所。
私の後ろに立っている人が、鏡の中で優雅に微笑んでいる。

「高校生なら、それが何なのか、大体の人が分かっちゃうんじゃないかしら?」
「何ナンデスカ・・・?」

分かってはいるが、念のために聞いておく。

「キスマーク?」

小首を傾げる姿は、こんなときでなければ、素直に可愛いと思えたのだろう。
だが、今は憎らしく見えて仕方ない。

「そんなもの・・・!」

振り返った瞬間、視界が暗くなった。

「っ・・・、ん・・・」

濃厚なキスに襲撃され、洗面台に手を突く。
唇が離れたときは、反撃するような力は残っていなかった。

「ずる・・・」

荒い息を整えながら、非難する。
そんなもの、先生にはへの河童なのだろうけれど。

「鍵を掛けたってことは、そういうことよね?」
「ぅ・・・」

はい、確かに、希望しました。ちょっとばかし、後悔してるしだいであります。

「ベッドがいい?それとも、ココでハードにしちゃう?」
「しょ、初心者なので・・・、ベッドがいいです・・・」

その二つ以外の選択肢はないと思い、ソフトな方を選ぶ。つか、ココでどうヤルんですか。

「じゃぁ、お願いどおりに」

よかった、無事受理され―――

「しようとは思うんだけどね」

なかった。

「いつまでも"先生"じゃ、ベッドでもハードにしちゃうかもしれないわよ?」

うわ、二択の意味なし。
ていうか、先生のお望みを叶えても、ハードになりそうな予感が。

「~~~~~・・・・・・はぁ」

とにかく、従っておこう。抗うよりはマシだろう。

「葉月さん」

今度は、私の名前を呼ばせてやろうと決心した。


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2009年01月22日 | 保健室シリーズ | コメント 0件 | トラックバック 0件 | トップ

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